排泄介助(オムツ交換)

研修目的(なぜこのテーマで研修を行うのか)

介護といえば排泄介助(オムツ交換)は一般的な業務ですが、わたしたち訪問介護の現場ではそれほど多い業務内容ではありません。

その為、特に介護の経験自体が浅い方にとっては「どうやったらいいかわからない」、「どこに気を付ければいいかわからない」といった疑問や不安も多いと思います。

今回は、特に「訪問介護としての」具体的なオムツ交換の方法について学んでいきたいと思います。

目標(本日の研修で達成する事)

  • なぜその方法なのかを考え、理由がわかる。
  • お客様、介助者ともに負担の少ないオムツ交換について理解する。

環境

  • お客様本人・・・一般的には紙のおむつカバー、尿取りパッドの組み合わせ。施設では布おむつを利用している施設もあるが、在宅では洗濯の手間などからあまり一般的ではありません。
  • 必要物品・・・お客様ごとに違う。「バケツ、清拭用タオル、石鹸」、「お尻ふき(ウェットティッシュ)ティッシュ」。更に汚物を包むための新聞紙など。※使い捨て手袋はどのお宅でも必須です。汚物の捨て方は各家庭で異なります。「トイレのゴミ箱」、「台所などの他のゴミを捨てているゴミ箱」、「便はトイレに流してから」など。
  • 本人の周囲・・・ベッド、介助バー、サイドレール、ベッドのリモコン、ゴミ箱、ベッドの高さも大事ですが、「どれだけ重心を近づける事ができるか」が大事です。これについては、原理・原則でも触れます。

プライバシー等への配慮

サービス提供の場が自宅ではあるので、ある程度のプライバシーが確保されてはいますが、オムツ交換を受けている状態であれば、ほとんどの場合、その場に他の家族もいます。臭気、露出、言葉遣い等に配慮しましょう。

原理・原則

オムツ交換の原理原則にはどんなものがあるでしょうか・・・?

原理原則の例

  • 羞恥心への配慮(カーテン、長時間露出した状態にしないなど)
  • 室温、体感温度の確認
  • 皮膚状態の確認
  • 排泄物の確認(尿・便の有無。便の形状、色、量。尿の色、量、臭いなど)。
  • 付随して、水分摂取量の確認など
  • 汚れたオムツは直に床やベッドには置かない、手袋をする(感染防止)
  • 側臥位になる場合は、患側は下向きにしない
  • 陰部から肛門にかけて拭く(前から後ろ、という表現を用いる事もあります)
  • 対象者の背部から介助を行う、など・・・

なぜ、「陰部から肛門にかけて拭く」のか?

特に女性の場合、膣に汚物や雑菌が入り込んで、尿路感染症などを引き起こすのを防ぐためです。

なぜ、「対象者の背部から介助を行う」のか?

上記の(陰部から肛門にかけて拭く)方法を取ろうとしたときに、背部からであれば無理なくスムーズに行えるからです。

特に陰部洗浄を行わずに清拭のみの場合は、対面では非常にやりにくくなります。

また背面から行う事で、介助者の重心を作業の場に近づける事ができるので、腰痛の予防にもなります。

※訪問介護の場合、この方法がどうしてもとれない場合もあり得ます。

多くの方が、だいたい6~8帖程度の居室に介護用ベッド、場合によってはタンスやテレビ、車椅子などがあり、ベッドの片側を壁に着けて設置しているからです。

しかもその場合には、車椅子への移乗を優先して麻痺側が壁側(サイドレールに掴まって側臥位をとると対面になる)という状態が多いと思います。

ですから、私たち「訪問介護という専門職の視点」としては、

  • 麻痺がある場合、どちらを壁側にして寝ているか
  • 車椅子は適切に使用しているか
  • 上記の様な理由からベッドの移動は可能か
  • その際、コンセントの位置はどうか、等を観察する必要があります。

そのうえで可能であれば、患側側のスペースも確保できるよう本人、家族等へ理解を求める事が必要になってきます。

具体的な手順

■清拭タオル・陰洗ボトルを使用したオムツ交換

  • これから行う介助への説明を行い、同意を得る
  • 室温の確認、プライバシーの確保(戸を閉めるなど)
  • 物品などの準備(新しいオムツ、手袋、清拭タオル、バケツ、お湯、新聞紙など)ベッドは必ずフラットにする。※事前に必ずお湯の温度を確認する。自分の二の腕の内側にかけてみて確認しましょう。
  • 対象者の体を手前に引き寄せる(水平移動)
  • ズボンを下げる。手袋を履きオムツを開く。
  • 汚れを確認する。

【排尿のみの場合】

  1. 腹部から陰部へ流れるようにお湯をかける。その際、鼠径部をしっかりと開いて肌荒れが無いか確認する。またパッドだけでなくオムツ自体も汚れている時は、パッドをあらかじめ取り除きオムツ上で洗浄する。その後、清拭タオルで拭きとる。※石鹸を使用する場合、身体にお湯をかけずに石鹸に湯をかけて泡立てる。洗浄したらタオルでできるだけ拭き取ってから洗い流す。
  2. 側臥位になってもらい、肛門周辺などを確認。清拭する。
  3. 手袋を脱ぐ。パッドを抜き取り、新しいものを敷く。オムツも汚れている場合は、丸めて身体の下にできるだけ押し込み、新しいオムツ、パッドを下に敷く。
  4. 仰臥位になってもらう。オムツごと交換した場合は、この時に取り除く。
  5. 陰部とへその中心より若干、上の位置にパッドを軽くひく。鼠径部を引くようにして、パッドが密着するようにする(注‼パッドを引っ張って食い込ませないようにする)。※男性の場合は、パッドを巻いて装着している方もいるが、そのような装着をしている方は特に陰茎をしっかりと確認する。
  6. オムツのテープが中心で止まるようにする。ずれていた場合はオムツだけを引っ張らず、対象者の身体を浮かしてもらいながら調整する。
  7. ズボンをあげる。片付け。

【排便があった場合】

1から6までは同じ。

7. 便をティッシュなどでできるだけ取り除く。パッドだけの汚れであっても洗浄が充分にできないようであれば、拭き取った後にパッドを取り除く。

8. 特に女性の場合は膣の中まで便が入り込んでいることがあるのでよく確認する。男性の場合、陰嚢部の汚れが落ちにくいので、充分に洗い流す。

※パッドを敷く際に一般的にはオムツのギャザーを立てると言われていますが、これについては一長一短があります。対象者の排泄パターンなどにより使い分けてください。

■お尻ふきを使用したオムツ交換

手順としては清拭タオルの代わりに用いるだけなので、それほど変わりませんが、お尻ふきはコスト、拭き取る手間や破棄するゴミの量などの面で清拭タオルよりも使いにくいので、サービス導入時に予めそれぞれのメリット・デメリットについて説明し、出来るだけ清拭タオルの使用に切り替えてもらうのが望ましいです。

○お尻ふきのメリット、デメリット

メリット・・・清潔、(清拭タオルに比べれば)物品が少なくてすむ、洗い物が少なくて済む

デメリット・・・コストがかかる、ゴミが多くなる、商品によって極端に薄いものや小さいなどがあり、相応しいものを選ぶのが難しい、陰部洗浄をした後は結局乾いたタオルも必要、特に便の時に何度も取り出さなければならない為、取り出し口が不潔になる可能性がある、清拭タオルであれば温かくしたものを用いて、手全体で抑えたり軽くもむことで拭き取りの効率だけでなく血行促進の効果も期待できるが、お尻ふきではかなり大きいものでなければできない、冷たい、など・・・

事情により、どうしてもお尻ふきでなければならない場合には、強く拭きすぎないように気を付ける必要があります。

その他

○作業の体勢など・・・

・一般的に「ベッドは高く」といわれていますが、介助者が直立した状態で作業ができるくらいの高さまで上がるベッドはほとんどありません=必ず屈んだ(腰に負荷のかかる状態)作業になります。その状態を避ける為、ベッド上に膝を乗せて作業する事でより重心近づける事ができ、負担が軽減できます。

・サイドレールは必ず作業の前に取り外しましょう。少しでも重心を近づけるためです。サイドレールによりかかったまま作業する方を見かける事がありますが、破損の原因になりますし指先だけの作業(小さな筋群の利用=痛みを与える事)に繋がるのでやめましょう。

○環境について・・・

・汚物は対象者の足側(臭気から遠いところ)に置きましょう。

・物品を置く場所に注意しましょう。例)ベッド上に陰洗用のボトルやタオルを置かない、ベッドの周囲に注意する(ベッドを下げる時にゴミ箱などを挟み込まない様、予め確認する)、新しいパッドやオムツは予めベッド上に準備する。

・手袋をしたままタオルケットや対象者、サイドレールなどを触らない

・サイドレールなどを外した場合は、危険のない場所に置く

・サイドレールは必ず元に戻す

○物品などについて・・・

・尿量の多い方に対して、パッドを二枚重ね、或いはずらして二枚を横に並べるなどしても殆ど効果はありません。そのような方には両面吸収のパッドを用いるよう提案しましょう。

・不要な衣類があれば、便の時の拭き取りのウェスとして使用できますので、ご家族などに提案してみましょう。

・手袋は使いまわさず、出来るだけ毎回取り換えてもらうようにしましょう。特に便の時にはその都度、捨ててもらうようにしましょう。

・パッドなどが殆ど濡れていない様でも、尿のシミがあれば臭いがします。少しの汚れでも交換するようにしましょう。

※これらは直接経済面に関わるところなので、事情によっては対応出来ない場合もありますので、杓子定規な対応にならないようにする必要があります。

まとめ

排泄介助は介護の中でも特にデリケートな介助になりますし、ちょっとした油断が即トラブルに繋がります。また私たち自身の健康にも直接的に関わってくる為、確かな技術も必要になります。私たちの気づき(観察)、心遣いが問われる介助であるという事を忘れずに適切な介助ができるようになりましょう。