10.リスクマネジメント

研修目的(なぜこのテーマで研修を行うのか)

私たちがサービスを提供(ケア、介助)する高齢者や障害をお持ちの方は、私たちが普通にできる事が困難であるためにサービス(介助)を要しています。

つまり、サービスを提供する対象自体がリスクを孕んでいると言えます。

そのため私たちは、お客様が安心して自宅での生活を継続できるよう、細心の注意を払ってサービスを提供する必要があります。私たちは、常にリスクマネジメントの視点を持たなければいけません。

しかし、身体的な介護の場面のみに危険が潜んでいる訳ではありません。

介護の現場で発生する様々なリスクを知り、その対処法を学び、安心して業務に当たれるように心がけましょう。

 

目標(本日の研修で達成する事)

  1. 私たちが意識しなければならない様々なリスクについて理解する。
  2. ヒヤリハットと事故の違いについて理解する。 3 様々なリスクに遭遇した時の対処法について理解する。

リスクマネジメントの定義

「リスク (risk)」とは英語では「(主に能動的な行為による)危険性」を意味する言葉です。 経済用語とし ては「不確実性」を意味する言葉で、予測が外れること、予想外のことが起こる可能性を示しています。

次に「マネジメント(Management)」とは、集団(組織)を統御し操縦すること、管理し経営することを表します。 リスクマネジメントを直訳すれば「危機管理体制の構築」と言っても良いかもしれません。

・リスクをあらかじめ予測し、可能性を抑制していく

・予測したリスクが起きた際の行動予定を事前に考えておく

リスクマネジメントの基本的な考え方は上記の2つです。ちなみに経済用語では「リスクヘッジ」という言葉がありますが、こちらは不確実性がある投資において、万一の危険性を考えて投資先や資産を分散しておく方法を指します。 直面したリスクに対しての回避法という意味合いが強いですね。 リスクヘッジの対象をより幅広く取り、対処における全プロセスを指したものが「リスクマネジメント」であると言えます(以上、「cotree( https://cotree.jp/columns/888)」 より引用)

 

様々なリスク

介護の現場では「リスクマネジメント」というと転倒防止や誤嚥の防止など、身体介護にまつわるものが多く 取り上げられます。確かにそれらも避けては通れない大事なものですが、それ以外にも私たちが考えなければ ならないリスクがたくさんあります。

話し合ってみましょう・・・私たち訪問介護という職種で気を付けなければならない(危機管理)しなければならないものには、どんなものがあるでしょうか?

考えられるものの例として。・・

1 物損 お客様の財産(テレビ、家具、花瓶等)の損壊、紛失等。会社の備品等の損壊等

2 情報の漏洩 個人情報やプライバシーなどの流出や紛失、社内のシステム・帳票等の流出や紛失等

3 自然災害 地震・台風・洪水や停電、盗難等による損失

4 お客様とのトラブル クレーム、口コミ、SNS の拡大・炎上、訴訟等

5 財務 虚偽の記載、記載の不備、不正請求などによる返還等

6 健康管理 社員の突然の病気や事故。交通事故による損失等

7 PC データの漏洩、損壊 コンピューターウィルス等によるデータ消去、クラッシュ等による損失等

その他にもあったでしょうか?今後の研修では、それぞれの項目についても触れていきたいと思います。 今回は、これらさまざまなリスクを予防する方法についてと、遭遇した時の対処法に重点を絞って学びましょう。

リスクを最小限に抑える、事故を起こさないようにする為に

この様に、私たちの職場には様々なリスクが考えられます。

しかし、事故を全く起こさない事は不可能です。

ただし、その事故による損失を少しでも小さく抑える、未然 に防止するために有効な方法として「KYT(危険予知トレーニング)、ヒヤリハット」があります。 下の画像を見て下さい。

※皆さんの職場での画像などを利用してください。

どんな危険が考えられますか?

 ヒヤリハットと事故報告書の違いについて

介護の現場などで良く見受けられるものとして「軽微な事故であればヒヤリハットシート、受傷しているなど重大な事故は事故報告書」という運用がありますが、これは間違いです。

軽微でも重大でも、事故は事故です。しかるべき方法によって記録・報告する必要があります。

ではヒヤリハットとはなにか? それは「気づく力」です。

例えば、冬期間はこたつを使用する家庭も多いと思います。その際、コンセントのコードはどのように配置されていますか?

ベッドサイドでポータブルトイレを使っているお客様もいると思います。その方のベッドの高さは適切でしょうか?柵の位置は適切でしょうか?そもそも、自分でベッドの高さを変える事の出来る方でしょうか?

そのような視点が無ければ、事故が起こった後でしか、何が危険だったのかに気づくことが出来ません。

「このコードがここの位置だと○○な危険があるのでは・・・?」

「この器具の場所はここだと○○してしま うのでは・・・?」

「わたしは出来たけど、他のスタッフだとこれは出来ないのでは・・・?」等の想像力を働かせることが必要になります。

そしてそれをそのままにしない事。これがヒヤリハット報告の意味です。

ヒヤリハットトレーニング

先程のイラスト等を見て、いくつもの意見が出たと思います。

その中には自分にはなかった視点もたくさんあったと気づいた方もいると思います。

このようなトレーニングを続けることで、自分の危険予知の引き出しをたくさん作っていく事で、危険予測が 出来るようになっていきます。

 

事故報告書

人間のやることには必ずミスがあります。

どんなに気を付けていても残念ながら何らかの事故は起こりえます。

事故が起きてしまった時は、事故報告書が必要です。

言語化することで、客観的に事故を見ることができ、なぜこのような事故が起きたのか、今後同じような事故 を起こさないためにはどうすれば良いのか、といった分析(=サービスの質の向上)にも繋がります。

またコン プライアンスの面からも、報告書が必要であることももちろんです。

事故が起こってしまった時は

上記の通り、どんなに気をつけていても事故は起こることがあります。

私たちもその日その日で体調が違うように、お客様も昨日と同じADL とは限りませんし、物は日々、劣化していきます(自然に壊れる)。

まず何らかのトラブルが起きた際には、必ず事業所携帯に連絡しましょう。

そして管理者の指示を仰ぎましょう。それだけで大丈夫です。

その後、必要であれば現場で何らかの対処をしていただいたり、報告書を提出して頂いたり等をお願いする事もあります。

一番してはいけないのはそのままにする事です。

また(連絡した方がいいのかな、どうなのかなと)判断に迷った時は連絡すべき時です。

その後の対応方法については、運営基準や重要事項説明書に記載のフローも参照してください。

 

まとめ

今回は、

  • 介護の現場では、対お客様(人)に対するリスクだけではなく物などに対するリスクもある。
  • 潜在的なリスクに対応できるようにする為にKYTが有効である。
  • 迷った時は報告する時

以上の事を学んで頂きました。

また私たちの業務には、対お客様以外にも様々なリスクが潜んでいる事も気づいていただけたと思います。

皆さんからも継続的に「このような場合はどうか」、「こういった内容の研修をやってほしい」等の意見を頂ければ、それらも取り上げて、より質の高い中身の濃い研修がしていけると思います。

是非、「気づき」を大切に、そして意識して業務に当たって頂きたいと思います。